どうしましょうね?  彼女にはこんなもの似合わないだろう。  ましてや、これも彼女の事ですから「こんなに金のかかったものはいらない!」とか言いそうですね      「…?どうしたんだ、滝島。 眉間にシワが寄ってるぞ…。」     バタンッ!!  俺は急いで開いていたPCを閉じた。  そして、なんでもないですよ、といい、PCの電源をきった。  いつものSA専用の温室。  今の時間帯、それに快晴、というのもあり、三月の午後の陽気は暖かい。    こんな天気も普通に過ごせば気持ちいいのだろう。が、  三月は俺にとっては毎年欠かせない日がある。  そう、それは-------  「なぁ、滝島?お前の仕事が忙しいのは分かるが---あまり根をつめるなよ?体は本当に大切なんだからな」  そう、光の誕生日。    心配そうに、光は俺の瞳をまっすぐに見つめる。   瞳に吸い込まれそうになるくらいに輝く瞳。  いつも無意識に俺の心を天に舞わせてはすぐさま落とす。    ある意味…魔性の女性ですね。  でもそんな彼女を愛しているのはまたり前で。      だから。彼女のために毎年のように頭をかかえるが、    「プレゼントに悩む」と言うのは、彼女がいつも俺の傍に居てくれている証だから。    仕事なんかよりずっと楽しくて。     「さて、何にしましょうかね。」    ふと、小さくつぶやいた俺の声が  光に聞こえてたとは。  そのときは思いもしなかった。 †  「滝島?」  -----バタンッ  「なぁ滝島?」  -----ピッ  「『何にしましょう』って…なんだ?」  「何にもありませんよ?」  -----------怪しい。笑顔が作り笑いだぞ。    滝島は、この頃…私が近くに行ったらPCや携帯の電源をすぐに切る。  前まで、こんな事は無かったのに。    滝島…私に対して隠し事してるのは…バレバレだぞ?    また---大変な事に巻き込まれてるのか?   私だって滝島の力になりたいんだ!!  滝島が危ないめに遭ってるのは-----私としてもほっとける筈が無い!!         ガターーーーン!!!    「滝島!!------お前はまた、何を隠してるんだっっ!」    自習室。  滝島がこもっているもは分かってる。  聞き出すべく-----授業終了後ココにきたが。    「なんですか、急に。 そろそろ下校時間ですよ?帰りましょう?」  「そんな事より!!何を隠してるんだ!!」  「何にもないですよ? それより、今日出かけるので…また明日。」  「…」  -------バタン。    ---------言えないのか    そうか……  よし!!!!! 何がなんでも暴いてやる!!  今日…出かけるって言ってたよな?  きっとそれに関係することだ。  尾行してやる!!今日!!!      何がなんでも----! † ----------バタンっ  「ふぅ…とりあえずは決まって良かったですがね。」  迎えの車に乗り、とりあえず、今日。悩んだ末、結局は親父の進めた店に決め、注文した彼女へのプレゼントを受け取りに行く事にした。    …それにしても、彼女の事になると…どうしてこんなにも考えるのだろう。  仕事は---「簡単」といっては何だが、幼い頃からやってきたこともあり、少しは手馴れてきている。  なのに、彼女のプレゼントだけでこんなにも考えるなんて----------俺はどうにかしてますね。      でも…何か最近、光が俺の周りをかぎまわっている。  当然、このことは秘密にしときたいから-----光には少し冷たい態度を取ってしまいましたが。    したくてやったわけではない。 だけど、それ以上に光の喜ぶ顔が見たいんですよ?  そんな事を考えてるうちに、目的地に着いた。  そこは、族に言う『セレブ』の御用達の宝石店。  警備員が自動ドアの前に入る中、顔パスで通してもらった。  店の中は広く、落ち着いた雰囲気の中、どの宝石の個性も最大限に出せる様に一個一個丁寧に展じられてい。ショウウィンドウの中に収められている商品はどれも、大きさも値段も最大級だ。      その店の店長と名乗った女性に、「注文品はもう取り寄せてあります」と、それを渡してもらった。  「喜んでくれるでしょうか…?」  ふ、と彼女の笑顔を思い出し心が暖かくなるのが分かった。    その後会計をカードで支払い、ほっと一息ついた。  ------------が。  トビラから出る際、チラと眼に横切った「何か」があった。    それは、長い黒い髪。 それと春用の特別な制服。  物陰に隠れながら、『バレてない』とでも思っているのか、こっちを見ている。  …もしや。    「…光!?」 †  …バレたか?  …いや、まだ大丈夫だろう。  物陰に隠れながら、思考を巡らせる。  今、ココにいる理由は数十分前にさかのぼる。  『尾行する』  と決意した後、滝島が正門から出て行くまで待つ。  自習室から出、廊下の窓から滝島が車に乗ったのを確認し。  …その後、滝島の車を(走って)追いかけて。  周りからの視線が凄く気になったが、気にしてる暇も無く全力で走った。  その後、何とか見失わずに追いかけて  滝島の車が止まった事を確認し、密かに隠れた。  そして暫く潜んで観察していると、扉が開き、滝島が出てきた。  『どこにいくんだ?』  と思い、滝島をガン見していたら、滝島は宝石店と思われるいかにも高級そうな店に入っていった。  暫く、中で何らかのやりとりがされていたが、それを終えたのだろう滝島は扉から出てきた。  バチっっ!!  …一瞬、滝島と…眼が合った気がした。  が、気のせいだろう。  滝島は私がつけて来るなんて思いしないだろうからな!  …と私は勝ち誇ったかのようにその場にいた--------- †  …確実にアレは光ですね…。  やられた…。  きっと、学校から(彼女のことだから)つけて来たのだろう。  …全く、無茶ばかりする人ですね-------  『…………そうだ。』  と何事にも良く働く頭の中で閃いた。  -------さて、やりますか。  †   …!!滝島が動いた。  まだ隠れていた私は、滝島の動作一つ一つ、見落とさないようにしていた。     何だ、車の運転手に話しかけている。    どうやら、『先に帰って』と言ったようだ。  その証拠に車が滝島を乗せず動いた。  …滝島は、何をするつもりなんだ----!!  予想のできない事に頭をひねらせていると、滝島は走って細い路地裏に行く。  …尾行するべきか…?  もしかしたら、これから何か大変な事に巻き込まれるのかもしれない。    よし!尾行続行だっっ!!!      †    走って、走って。  どんどん人気の無いところに滝島は走る。  どこまでも続く細い路地の間を縫うように走り抜ける滝島を見ながら、私も走った。    人一人がやっと通れるような道の曲がり角を滝島は曲がった。  私もそれに食らいつくように走り、曲がった。  「…光…………」  「うわぁあ!?!?」    見つかった--------  曲がり角で待ち伏せしていた滝島にばったりと遭ってしまった。  どうしようかと、言い訳をあれこれ考えてた瞬間。  「…ふっっ!!!」      腕を掴まれ、引き寄せられて。  視界が暗くなったとたん、暖かいモノが触れてきた。  …ドキン  と、心臓がなる。  「…光、何故ついてきたのですか?」  という、真剣な顔をした滝島の問いに。  嘘もつけず、心臓が早鐘を打つ中、  私はありのままの話をし始めた。   †  「ほう。で、何かに巻き込まれていると思い、つけてこられたのですね?」  「…ぉぅ…」  「…俺は、何も巻き込まれてませんよ?」  「じゃあ、何でこんな路地裏に走り出したんだ…」  「光がついてきてるのを気付いたからです」    一通り説明を終えた私は、滝島の隣で小さくなって座っている。  こいつは、嘘をつくのが苦手なのか得意なのかはよく分からないが、この質問は答えてもらいたい。      「…じゃあ…どうして、どうして私に対してこの頃素っ気なかったんだ!!!」    ヤバい-------泣きそうだ…。  数日の間でも、滝島に冷たくされるのが…こんなに辛いなんて。  本当に---私、弱いな。  「…!泣かないで下さい!」  こいつにしたら、珍しく張り上げた声。  「…光?これを----受け取っていただけますか?」  ごそごそ、と滝島の胸のポケットから取り出され  目の前に差し出された小さな箱。  その蓋を滝島は開いた--------  中には。  「…っ!宝石…?」  「…はい、サファイヤです。」  「なんで…これ!」  「…光、誕生日でしょう?だから、何を渡すか-----本当に悩みましたよ? 光の眼の輝きで、コレにきめたのですが…」  「…!!」  「PCで探そうとしたら、光が来ましたし…内緒にしたかったので。 光には少々冷たい態度を知らない間にとっていたのかもしれません。 本当にすみません。」  「…だから-----か。」  「はい。受け取って…いただけますか?」  「でも、凄い高そうだぞ?私なんかが貰っていいのか?」  「…是非」  「…ありがとうな。」  一言、お礼を告げて。 精一杯の笑顔で返す。  すると、また滝島の顔が近くに寄ってきて。  抑えられない鼓動のなか、私は幸せを感じていた。 拍手使いまわし(というかそのまま)ですorz